2024.09.01
【漢方通信9月号】子宝相談/新しい命のために

 赤ちゃんに来て欲しいのに、その願いが長年かなわない夫婦が増えています。不妊治療実績件数は、449,900件(2020年ARTデーター、日本産科婦人科学会)。医療機関で不妊治療を受けても、24歳頃~33歳頃の妊娠率は40%前後。妊娠したとしても36歳での流産率は20%を超し、年を重ねるとその数字は急上昇します。43歳で無事出産出来るのが5%、44歳で3%に下がります。こんなふうに、赤ちゃんを望むかたの心が沈んでしまう数値が示されます。「年を重ねると赤ちゃんを産むのが難しいなんて、誰も教えてくれなかった…」と、悲しむかたがあるのです。


20 歳台後半から30歳後半、赤ちゃんを望むかたの子宝相談が増えます。新しい命を招くために精一杯診立て、ともに困難を乗り越える気持ちで対応します。40歳を過ぎたかたからも、相談いただくことがあります。文頭に記した様に、出産に至るには困難な状況です。医療者側も、「新しい命に、不都合な身体の状態があったらどうする…」と躊躇しがちです。関連する誰にとっても、一生抱えなくてはならない負の問題になります。

 子宝治療は、特別なことをするのではありません。女性の心身の状態から、不快さを消す対応をします。

月経遅延(無月経)なら生薬・トウキ(当帰)で治療、代表薬は四物湯(しもつとう)です。月経痛・経血に血塊が混じるのなら生薬・トウニン(桃仁)で治療、配合薬は折衝飲(せっしょういん)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)です。

感情の波立ちが大きいなら抗ストレス生薬・サイコ(柴胡)とシャクヤク(芍薬)で治療、配合薬は加味逍遙散(かみしょうようさん)です。イライラが強く長く続くときは、四逆散(しぎゃくさん)を選びます。四逆散にも、抗ストレス生薬2種が配合されます。不調を覚えるうちは治療を続け、性交渉の際も避妊してください。新しく訪れる命に、出来るだけ健康な心身をあげたいからです。

だけで治療する訳ではありません、生活習慣も見直してください。

「早寝・早起き」「目を酷使しない」「身体を動かす(散歩)」という暮らしを心掛けてください。それらは血液循環を改善し、新しい命がやって来るのを助けます。

男性側に原因があることも、増えています。男性の疲れが著しい・加齢の状況(40歳以降)なら、鹿茸などを用いてください。身体が健康なら、良質な精子が生み出されます。
生活習慣と服薬で笑顔が戻ったとき、新しい命がやって来やすくなります。
芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)という、薬効は強くありませんが、体循環を守る薬の服用を始めます。避妊を止め、あるがまま、なすがま
まで、夫婦仲良くお過ごしください。慈しむ心を忘れずお過ごしください。そして新たな命の芽生えが分かったとき(妊娠が分かったとき)、芎帰帰調血飲第一加減の服用を止めてください。活血薬が配合されるためです。

しかし元気な赤ちゃんが生まれたあと、この薬を思い出してください。産後15日後に不正出血が無ければ、1カ月間継続服用してください。消耗した女性の身体を、もとに戻してくれます。芎帰帰調血飲第一加減とは、本来「産後の女性の体調回復」のために用いられる薬です。
強く活血すると大量出血で命の危機となることもあり得るため、ソフトな薬効の体循環回復薬・維持薬です。漢方視線からお話しすると、産後服用しても、母乳に悪影響を及ぼさないと捉えています(配合されるトウキやジオウが母の血分となり、それが母乳に変わる)。妊娠中も漢方薬を用いたいかたには、当帰芍薬散をお薦めします。医療資格者と相談し、妊娠初期から用いてください。いま生きるすべてのかたの人生が、良い方向へ導かれるよう、そして赤子の人生が希望に満ちたものになるよう、願って止みません。

漢方について・食養生についてなどの情報をYouTubeやLINEでも配信しておりますのでぜひご登録よろしくお願い致します。

  • 【漢方専門】一心堂薬局楽天ICHIBA
  • amazon

10:00~19:00 年中無休0120-73-1410